2015年7月16日木曜日

【回路】8MHz Ladder Filter Design , Plus

【8MHzのラダー型クリスタル・フィルタを作る・プラス】

完成したラダー型フィルタ
 写真は使用する状態に組立てた8MHzのラダー型クリスタル・フィルタです。

 前のBlog(←リンク)のようなテスト用の構造では実際に使う時には不便でしょう。 小型化してモジュールのように作っておくと扱い易くなります。 水晶振動子のケースは端子から絶縁されていて、浮いているので必ずアースしておきます。 ニッケル鍍金なのでややハンダの載りが悪いですから事前にハンダ付け部分を磨いておくとハンダが容易です。 過度に加熱して水晶振動子の特性が変化でもしたら元も子もありませんから・・・手早くやります。

 このように独立したモジュール化は必ずしも必要ではありません。水晶振動子やコンデンサをSSBジェネレータ基板に直接組み付けてしまっても良いでしょう。 その方がスペースも小さくて済むし性能も出し易いように思います。 ここでは、単独で性能評価する都合でモジュール化しておくことにしました。他へ流用するのにも便利ですので。

参考:この部品配置でパターン化した専用の「フィルタ基板」を製作しています。両面スルーホール、グリーン・レジスト、シルク印刷付きです。少量で申し訳ないが頒布できる見込みです。もし入手希望があればコメント欄やE-mailにて表明を。基板製作はJR2FNK/1鶴田さんにお願いしました。配線パターンには私の要望も反映されてます。

基板完成:2015.7.25】
 追記です。 発注していたフィルタ基板が完成しました。写真のようになっていて、旨く出来上がったようです。

 両面スルーホール基板ながら、片面のみベタGNDにしたので不要なストレーキャパシタの付加は最少限になっています。 但し「おもて面」で水晶振動子の足の回りのパターンと水晶のケースとのクリアランスが不足しているようなので、水晶振動子はやや浮かせてハンダ付けする必要がありました。それ以外はまったく問題ないです。標準的な1.6mm厚の基板にしたのでフニャフニャせずしっかりしています。

 端子は細ピン・ピンヘッダの5ピン分から途中を抜いた3ピンがマッチしますのでソケット形式のフィルタにすることもできて便利です。もちろん、2.54mmピッチの蛇の目基板に搭載することもできます。 それほど枚数がないので先着順で予定数量に達するまで頒布します。 もちろん、従来型のラダー型フィルタの製作にも使えるので持っていたら便利でしょう。

 頒布ですが希望者にお一人3枚ずつ(フィルタ3つ分)で行ないます。例によって、SASE+余剰部品あるいはワンコイン(¥500)と交換でお送りします。 商売ではありませんので利益などは考えていませんが、無償では死蔵するだけのお方が申し込むそうなので低額の有償にさせてもらいました。 基板化したことで性能が出し易くて、均質性に優れたフィルタが作れるでしょう。 まずはメールを。(注:SASEとは返信用封筒のことで、自分の住所氏名を書き82円切手を貼ったものです)←頒布終了しました。2015.08.11

測定用セットアップ
 出来上がったフィルタの特性を見ておきたいと思います。

 写真のような測定アダプタを製作してみました。 このようなものは必須ではなく、測定の都合に合わせて作ったに過ぎません。 端子は2.54mmピッチになっているので、同じピッチのインライン型ソケットをカットして使用しました。

 BNCコネクタとの間に入っている抵抗器は、スペアナの入力インピーダンスとフィルタのインピーダンスを合わせるための補正抵抗です。 これを入れずに直接接続してしまうと、正しい周波数特性が測定できません。

評価結果
 コンパクトに纏めて製作しましたが、前のBlogで得られた特性が再現できていると思います。 組立て構造に問題はなかったようです。

 往々にして、コンパクトに組みなおすと特性が変わってしまうことがあるので注意が必要でしょう。 特にこうしたフィルタのように入出力の端子間で100dBものアイソレーションが必要なものでは十分気をつけなくてはなりません。

 測定時にも注意が必要で、強い信号が出ている部分を覆うなどの工夫を行なわないとこのように奇麗な特性が得られないことがあります。 測定技術が問題になるので十分な経験を積んでおきたいものです。同じ道具があっても誰でも同じに測定ができる訳ではありません。

SSBジェネレータに搭載
 既製品と交換に製作したラダー型フィルタを搭載してみました。 やや基板サイズは大きめでしたが旨く搭載することができました。

 次項のように、まずはキャリヤ発振器の周波数をこのフィルタ用に合わせることから始めなくてはなりません。 USBなりLSBのキャリヤ周波数に調整が済んだら、次は各同調コイルを8MHzに合わせます。 その後でバランスド・モジュレータのキャリヤ・バランスを調整しキャリヤリークが最少になるように追い込みます。 もとが7.8MHzなので周波数が近いことから簡単に調整できました。 キャリヤ・バランスも殆ど再調整の必要はないくらいでした。

 マイク入力端子に低周波発振器を接続して周波数特性を評価してみました。 流石にSSB用に作ったフィルタなので必要以上に帯域幅が広いこともなく、なかなかFBなSSB波が得られました。 通過帯域内のレベル変動もCB用クリスタル・フィルタよりずっと小さいのは予想通りでした。USB側では不要サイドバンドのサプレッションがやや甘いのですが、これはフィルタの特性なのでやむを得ません。8素子でやれば改善できるのは確かです。 他の性能は7.8MHzの時と基本的に違いはありません。 十分実用的なSSBジェネレータになっています。

キャリヤ発振器の変更
 上にも書きましたが、キャリヤ発振器の周波数変更が必要です。 水晶発振子はフィルタ製作の余りを活用します。 もちろん不良品では駄目で、発振は問題ないけれど、他と周波数が合わないのでフィルタにはできなかったような水晶を使いましょう。 ここでは、上の方に少しずが大きかったものを使いました。 VXO形式の発振回路なのでそれで支障ありません。むしろフィルタの通過帯域特性から見てLSB用のキャリヤ発生に有利なように選んだつもりです。

 まずはUSB用に周波数調整して評価してみました。 そのままの回路ではLSB用の周波数に調整できなかったので回路の見直しました。 修正した回路でうまく行っています。 このあたり、使用する水晶発振子の特性とも関係するので個々のケースで対応方法が違います。 フィルタの方は簡単にできたのにキャリヤ発振器の方で思ったよりも手こずることがありそうです。 フィルタと同じ水晶振動子を使ったキャリヤ発振器はSSBジェネレータの製作には必須です。 幾つか試しているので、良さそうな回路が纏まって来たら公開するかもしれません。追記:(2015.08.14)キャリヤ・オシレータのBlog(←リンク)を公開しました。

                  ☆

 フィルタを作ってみましたと言うだけでは検証として不十分でしょう。 実際にSSBジェネレータに搭載し評価が済んで始めて実用性の確認ができたことになります。 ブレッドボードでの試作なので、どうしても構造から来る性能限界があって難しいところもあります。 実験の容易さの点では悪くはないのですが、ハンダ付けで作る前のテストとしては不完全なところがあると思っています。 そのあたりはブレッドボード特有の考察が必要になってくる部分でしょう。
 実際にキャリヤの回り込みあるいは、直接飛び込みのような現象があってGNDポイントを変えてみるなどの修正が必要でした。 ただ、ブレッドボードであまり苦労してもそのまま実用にする訳ではないですから見極めが付いた段階で早めに基板化に移行した方が賢明です。

                −・・・−

新設計でアプローチ
 道具さえあればしめたもの・・とは行かないのですが、設計ツールの話しがまだでした。次回はそのあたり具体的に見たいと思います。宿題を増やしてしまったようですが、慌てずにボチボチやりましょう。興味を惹かれたら継続してお付き合い下さい。コメントもお待ちします。例によって浮気して予告と違う方へ行くかも知れませんが悪しからず。(笑)

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 クリスタル・フィルタは機器全体から見たら単なる部品に過ぎません。 幾ら良いものが作れたとしても、活かしてこそ初めて意味も出てきます。 アナライザの画面とにらめっこしながら「良いフィルタができた」と悦に浸るのもオツなものですが、ぜひともFBな電波を出したり、受信機から心地よい音を響かせてみたいものだと思います。 そうでなくては機器への投資も製作に注いだ努力も活きてこないだろうなあと・・・。 de JA9TTT/1

つづく)←リンク